2024年7月18日 マイナ保険証に移行する補正予算に反対討論

ブログ

 日本共産党、森とおるです。私は会派を代表して、第65号議案「令和6年度、豊島区国民健康保険事業会計補正予算、第1号」は、可決することに反対の立場から討論を行います。なお、後ほど上程される6陳情第6号「現行の健康保険証とマイナ保険証の両立を求める陳情」は、不採択とすることに反対し、採択すべきという立場から討論を行います。

 改正マイナンバー法が、昨年6月2日に成立し、本年12月2日に健康保険証を廃止して、マイナンバーカードに保険証機能を持たせる「マイナ保険証」に一本化されることになりました。本議案は、マイナ保険証を持たない方に、健康保険証の代わりに資格確認書を交付する。また、これまでできなかったマイナ保険証、利用登録を10月から解除できるようにするなどのシステム改修経費723万1千円と、マイナ保険証加入者情報、送付やコールセンター委託経費2,443万3千円といった、健康保険証を廃止し、マイナ保険証を基本とする仕組みに移行するための経費、合計3,167万4千円を補正予算として計上するものです。

 多くの国民から様々な問題がある、いったん立ち止まるべきと声が上がっています。わが党は、そうした声を無視して強行する政府の態度は容認できず、国民に不利益をもたらす制度に断固反対です。以下、本議案に反対する理由を述べます。

 1つ目は、マイナンバーはトラブルが多発し国民に信頼されていないからです。

 他人の情報が紐づいていた。カードリーダーで資格確認できない。コンビニで住民票、戸籍を発行しようとしたら他人のものが出てきた。申請したマイナポイントが、他人のところに行ってしまった。公金受取り口座に別人のものが紐づけられていた。同姓同名の別人のものが交付されていたということまでありました。昨年、保険証に他人の情報が紐づいていたケースが7,300件もあり、他人の情報が誤って表示されたら、命や健康に関わる重大問題です。また、本人が手続きをせずに、希望していないのに、マイナンバーカードと保険証が勝手に紐づけられていたというケースまでありました。考えられないことです。

 全国保険医団体連合会の調査では、マイナ保険証によるトラブルが、医療機関で5,493件も発生し、いったん10割を徴収した例が1,291件。この中には払えないなどの理由で診察を受けずに帰った人もいたということです。これも考えられないことです。政府は総点検したといいますが、現実には部分的な抽出点検であり、全てを点検し解決したわけではありません。

 先月の新聞報道に、マイナ保険証は、情報漏洩が不安、従来の保険証が使いやすい、メリットを感じないと記事になっていました。それもそのはず、健康保険証機能のみならず、診療、薬剤情報、特定健診情報等も結合されていて、他にもマイナポータルで閲覧できる情報は増加しています。マイナンバーカードとパスワードを第三者が手にすれば、医療情報だけでなく、膨大な個人情報が、不正に閲覧され、危険に晒されます。

 こんなカードを国民が信頼するはずがありません。その結果が、豊島区の国民健康保険におけるマイナ保険証の登録状況は、本年4月時点で40.26%。利用状況は、わずか7.92%と数字が裏付けており、国も同じような状況です。

 2つ目は、医療を受ける権利を侵害するからです。

 後期高齢者医療被保険者証も同様に廃止されます。高齢者で介護を必要とする方は、マイナ保険証の保管や管理、使用についても困難なケースが考えられます。特養ホームなど、施設管理者が、利用者から保険証を預かっておき、必要なときには使うという運用をしている施設はたくさんあります。それがマイナ保険証になると、暗証番号も本人から聞き出して施設の職員がこれを使うことになるのでしょうか。介護や障がい者施設が、マイナ保険証になると、入所者の健康管理ができないと94%が答えています。個人情報が漏洩するリスクは高まり、もしも漏洩が起きれば処罰の対象となるからです。

 高齢者、障がいのある方の中には、マイナ保険証の取得や保管、パスワード管理、更新の手続きが必要になるため、使用が困難になるということは考慮されていません。パスワードを覚えられないからと、紙に記載しカードと一緒に保管し、持ち歩くことも想定されます。

 本区において、カードリーダーを運用している医療機関は、1月31日時点で82.3%。導入していない理由は、手間がかかり、費用もかかるため、廃業の危機も感じています。これに救済策や対応策はなく、陳情にあるように、廃業を余儀なくされるケースも出ており、地域住民の健康を支える、かかりつけ医が減少することになります。

 3つ目は、マイナ保険証に対する税金の使い方が不公平、極まりないからです。

 政府は、マイナポイントに何兆円も注ぎ込み、マイナ保険証の利用促進策として、病院や薬局で「マイナンバーカードはありますか」などの声掛けをやらせて、利用者が増えたら支援金を出すなどしています。また、豊島区も、国保だよりやホームページなど、あらゆる手段で、マイナ保険証を利用しましょうとアピールしています。マイナ保険証を使うと、紙の保険証よりも医療費を20円節約でき、自己負担も低くなるとしています。どこからこうした費用が出てくるのでしょうか。行政は都合が悪くなると、振り向けるお金がないと言いながら、マイナンバーには税金を湯水のように使っています。このような巨額の税金は、高すぎる国保料の引き下げや、医療の充実にこそ使うべきではありませんか。保険証の違いで差をつける不公平なやり方に同意することなど、断じてできません。

 さて、区民厚生委員会の審査で、マイナ保険証のメリットについて発言がありましたが、それぞれ私は概ね次のように述べました。

1.マイナ保険証になると経費を減らせる。これについては述べてきたように、巨額の税金が使われています。

2.保険証のなりすまし使用に効果がある。これについては、デジタル大臣も言っていました。しかし実際には次のような厚労省答弁があります。「市町村国民健康保険では、2017年から2022年までの5年間で50件のなりすまし受診や偽造などの不正利用が確認されている」というもの。なりすましはごく僅かしかないということです。大臣が、根拠もなく、なりすましに効果があると言っていること自体いかがなものでしょうか。

3.災害時について、かねてから政府は、マイナンバーカードは役立つと喧伝していましたが、能登半島地震では役に立たないことが露呈し、代わりにJ RのSuicaを活用する羽目になりました。

4.過去に受けた診療実績や薬の処方、受診歴が確認できるのでメリットがある。これも実際にはレセプトの後になるため、データ反映に時間がかかります。お薬手帳の方がよっぽど役に立ちます。

5.DX化推進に重要である。政府はDX化が遅れているからと理由づけして、盛んに進めようとします。しかし、デジタル化を推進する前提として、個人情報はきちんと守られること、国民にとって便利であることが大事であるにも関わらず、それらを蔑ろにして、拙速に進めることを強行というのです。こうしたやり方は間違っています。

 そもそも政府は、マイナンバーカードは任意と説明してきました。ところが、健康保険証を廃止して、マイナ保険証に一本化すれば、国民皆保険制度のもと事実上、全ての国民にカードの取得を義務付けることになります。資格確認書についても期限が定まっておらず、当面の経過措置のようなものということが、委員会質疑で明らかになりました。言っていることと、やっていることがおかしい。話が違います。

 よって、第65号議案「令和6年度、豊島区国民健康保険事業会計補正予算、第1号」は、可決に反対します。

 区民厚生委員会で、本議案と一括審査された陳情は、マイナ保険証はトラブルが多く、使用率がわずかしかなく、国民のマイナ保険証に対する不安や信頼性が低いため、12月から始まる健康保険証の廃止を中止し、当面の間、現行の健康保険証とマイナ保険証の両立を求めるよう、国に意見書を提出してほしいという内容です。これまで述べてきたように、いったん立ち止まり、現行の保険証の廃止を中止すれば済むだけのことです。

 豊島区は、国の言う通り指示に従えばいいというものではありません。多くの住民が不安を感じている、疑問の声が上がっている。地方自治体として、この立場に立って、国に意見を言う、改善を求める、こうした姿勢を貫くべきです。

 保険証は国民皆保険制度の根幹です。医療機関の窓口で見せるだけで保険診療を受けられます。情報漏洩することもありません。この制度を投げ捨て、巨額の予算と人手をかけて、国民を混乱におとしいれ、欠陥だらけのマイナ保険証に一本化するのは愚策としか言いようがありません。

 医療保険制度は、いつでもどこでも誰でも、必要な時に、ひとしく医療を受けられる国民皆保険制度です。しかしながら、マイナンバー制度によって機能不全に陥りかねず、地域の医療を支える担い手が不足し、住民の健康に対する安全性を大きく損なう事態になることが懸念されます。日本が世界に誇る医療保険制度を、将来にわたって維持存続させることが、豊島区議会の重要な役割です。

 よって、6陳情第6号「現行の健康保険証とマイナ保険証の両立を求める陳情」は不採択とせず、採択することを求めます。以上、討論を終わります。ご清聴ありがとうございました。

コメント